大判例

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東京高等裁判所 昭和51年(行ケ)28号 判決

事実及び理由

一  前掲請求の原因のうち、原告が実用新案権者である登録実用新案について、被告の登録無効審判請求から審決の成立にいたる手続、考案の要旨および審決の理由に関する事実は当事者間に争いがない。

二  そこで、右審決に原告主張の取消事由があるか否かについて考察する。

(本件考案と第一引用例との比較)

1  本件考案と第一引用例の考案とが、審決認定の一致点のうち、ポンプユニツトの設置場所を除くその余の点において一致することは原告の認めて争わないところである。

そして、元来、天井は社会通念上建家(建物)の一部であるから、通常建家と称するときは当然天井の部分をも包含するものと解するのが相当であるところ、成立に争いのない甲第二号証(本件考案の公報)によれば、本件考案の明細書には「給油所建家」および「天井」の用語について別段の定義がなされず、また、その添付図面(別紙第一図面、〔編註〕省略)には、建物の断面のうち上方部分に「天井」を示す符号7が付され、その下方に「給油所建家」を示す同14が付されているが、右両符号の付された部分は同一ハツチングによつて一体のブロツクとして画かれていることが明らかであるのみならず、同号証によつて認められる明細書中、「本考案は給油装置の改良に関するもので、車輛が自由に出入でき、さらに顧客が給油量を容易に知ることができるようにした給油装置を提供するものである。」、「ポンプユニツトを構成し、給油所において車輛や人の邪魔にならない給油所建家14内に設置される。」および「ホース8は天井7から垂下していて地面上には車輛の出入を規制するものが何もないので、車輛は自由に出入でき、車輛の停止位置によつて給油作業に支障を生ずることがない。」との記載によれば、本件考案の給油装置において、ポンプユニツトの設置個所は給油所建家内であれば足り、それが天井の部分であるとそれ以外の部分であるとによつて、考案の目的、作用効果上格別の差異はないものと考えられる。

原告は、この点について、ポンプユニツトを建家内の天井に設けると否とにより便、不便の差が生じる旨を主張するが、前出甲第二号証によれば、本件考案の明細書には本件考案がその不便の解消を課題としているものであることを窺わせる記載がないから、原告の主張は採るに足りない。また、甲第一五、第一六号証に示された給油所におけるキヤノピー式(張出し形)天井にポンプユニツトを設置することは不適当であることが推測されるけれども、ポンプユニツト設置個所の適否の問題は本件考案の実施上考慮さるべき事項たるにすぎず、そのような天井の給油所があることから逆に、本件考案においては、ポンプユニツトの設置個所として給油所建家から天井を除外する旨の限定があるものと解するのは筋違いといわねばならない。

以上の次第で、結局、本件考案の「給油所建家」は、通常の建物の概念におけると同様、「天井」を含むものと解するのが相当であり、したがつて、ポンプユニツトを天井に設置している第一引用例の考案をもつて、ポンプユニツトを給油所建家内に設けている本件考案と構成において一致するとした審決の認定に原告主張のような誤りはない。

(本件考案と第二、第三引用例との比較)

2  次に、給油装置において、表示計器を給油ノズルのみでなく、給油所の天井以外の場所に設けることが第二引用例に、給油所の天井に設けることが第三引用例にそれぞれ示されていることは原告の認めるところである。原告は、右各引用例には、給油作業者と顧客とがともに表示計によつて給油量を正確に確認することができるという本件考案の技術思想は全く開示されていないと主張するが、成立に争いのない甲第五号証(第三引用例)によれば、第三引用例の考案においては給油所の「天井または構築物に接する位置のような自動車の走行に邪魔にならず、かつ、給油地点から見うる位置へ表示計を取付け」(登録請求の範囲)ているから、その表示計は、明細書中特段の記載がなくても、給油作業者と顧客とがともにその表示計を見て給油量を正確に確認することができる構成であることが容易に理解され、したがつて、少くとも、同引用例には原告主張のような技術思想が開示されていないということができない。

(本件考案の進歩性の有無)

3 そうしてみると、第二および第三引用例における表示計器の技術を第一引用例の考案に適用して本件考案の構成とするには格別の考案力を要しないものといわねばならない。

したがつて、右各引用例に基づく本件考案の容易推考性を肯定した審決の判断は正当であつて、審決に原告主張のような誤りはない。

三  よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却する。

〔編註〕本願考案の要旨は左のとおりである。

モーター3により駆動され、貯蔵タンク1から油液を吸上げるポンプ2、ポンプ2によつて吸上げられる油液流量に比例して回転する流量計4、流量計4の回転に比例した信号を発信する発信機構5とを有するポンプユニツトを給油所建家14内に設け、ポンプ2に連なる配管6を給油所天井7に設け、配管6に連なるホース8を天井7から垂下し、ホース8の先端に給油ノズル9を設け、発信機構5からの発信により作動するカウンタ10とインジケータ12とをそれぞれ給油ノズル9および天井7に設けてなる給油装置

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